柔らかな優しさを感じる空間
「名は体をあらわす」というが、新型「ラフェスタ」もまさにそんな1台。車名は、イタリア語で祝・休日や楽しい出来事という意味だ。そんな名前のせいか、いい意味でとても脱力感のあるクルマに仕上がっていた。
どのあたりがどの脱力感なのかという前に、ライバルとなる5ナンバーサイズのミニバンを思い出してもらいたい。トヨタ・ウイッュにホンダ・ストリーム、どちらかというと両車とも、やる気満々のスポーティテイストがウリ。それに対してラフェスタは、まったく違うアプローチで開発されている。開発コンセプトは、少々長いが「乗る人全員の気持ちを明るくして心を解き放つエブリディミニバン」。簡単にまとめると、開放感がテーマとなっている。そのため、とにかくウイッシュ&ストリームなどと比べると、ウインドウ部分がとにかく大きい。ルーフに装着された国産車最大のパノラミックルーフ(1,500mm×800mm)と相まって、抜群の開放感を全席で楽しめる。そんな開放感優先でエクステリアもデザインされたので、とても親しみやすくゆったりとした印象。とくに、滑らかな曲線を持つDピラーや横長のリヤコンビネーションランプなどは、ラフェスタの個性を主張する部分といえる。
インテリアは、とても5ナンバーサイズという制約された寸法から想像できないほどゆったりと、そして柔らかな空間に仕上がられている。ダッシュボードにセンターコンソールなどやシートにいたるまで、ほとんどのパーツが柔らくラウンドしたデザイン処理が施されている。まず、初めてラフェスタに乗り込んだときに驚くのは、CVTのシフトレバーの存在。とにかく小さく、そしてコンパクトにまとめられているのだ。あまりにコンパクトのため、シフトレバーの位置を探してしまうほどさり気ない。いかにもココにあります的なゲートタイプなどとは、まったく違う視点でデザインされているのもポイント。
シートアレンジは助手席をテーブルにして、セカンドシートを前方にスライド。運転席から後席の子供とコミュニケーションが取りやすくするベビーフレンドリーシートなど多彩。両側スライドドアの効果もあり、実用性はかなり高い。
ハード面に目を移すと、新開発のオンパレードだ。エンジンとCVTは共に新開発。2リッターMR20DE型とCVTの組み合わせのみと、割り切った設定。この2リッターエンジンは、2,000回転で最大トルクの90%を発生する扱いやすい設計だ。2WD車が137ps、4WD車が129psをアウトプットする。プラットフォームも新開発。コレは、Cプラットフォームと呼ばれ、すでにメガーヌなどに使用されていてルノーとの共同開発されたもの。後部にクロスメンバーなどを追加するなどして、ラフェスタ用にチューニングして使用している。
とくに、騒音面に関しては遮音材などの2次的な要素で処理をするのではなく、エンジンはもちろんプラットフォームにいたるまで、根本から見直した。そのため、そのあたりの静粛性は、試乗記でチェックしたいところ。
グレードはもっともベーシックな20S、精悍さを演出するスモークメッキのヘッドランプインナーパネルをもつスポーティな20M、アーチ型のルーフレールをもつアウトドア系プレイフルと3つの個性がラインアップ。組み合わされるインテリアカラーは、20Sがベージュとブラック、20Mがブラックのみ、プレイフルがブラックの撥水加工シートとなる。基本的にブラックのインテリアカラーが中心だが、ラフェスタのキャラから考えるとベージュなど明るい色がとても似合いそう。明るいインテリアカラーがもっと増えると、ラフェスタの開放感という魅力は、さらに倍増できそうだ。
ウイッシュやストリームとはまったく違ったキャラクターで勝負をかけたラフェスタ。価格もライバルと比べリーズナブルな設定。ちょっと脱力感のあるスタンスは、キューブキュービックともつながる日産の癒し系キャラ。ミニバンに柔らかな優しさを求める個性派ユーザーの支持を集めそうな予感がする。