キビキビ感ありのフットワーク
まずは新たに加わったスポーティグレード、A-Sの走りを見てみよう。スプリングは1300cc、1500cc、1500A-Sの順に硬くなり、ハンドリングの向上をめざしている。
もともと、イストは前後のサスペンションにスタビライザー(ボディの傾き方を抑制するパーツ)を組み込み、接地感のある乗り味が特徴だった。それがA-Sではさらに際立っている。ステアリングの正確性が高く、硬めのサスペンションによって素早い切り返しを強いられても左右方向にあおられるような挙動に発展しにくい。
注目されるのは、スポーティグレードだからといって曲がる性能に特化させたハンドリングに陥っていないこと。あくまでも後輪の踏ん張り感に重点を置き、走行安定性を妨げない範囲でキビキビとした曲がる性能を大切にしている。たとえスポーティグレードでもコンパクトカーである以上は、初心者がハンドルを握るから、ドライバーを慌てさせない挙動に仕上げることが大切だ。イストはそのセオリーを守った設定で、ほかのグレードも少々マイルドな動きにはなるが、基本路線は変わらない。
動力性能は1300ccでも十分なレベルだから、1500ccとなれば実用トルクもタップリ。高速道路の巡航も快適に楽しめる。
最近はコンパクトカーのバリエーションが増え、競争は従来以上に激しくなった。イストは男性ユーザーでも気後れしないで乗られるデザイン、走行安定性を重視しながらスポーティ感覚も併せ持つハンドリングなどが特徴だ。基本設計の新しいクルマとはいえないが、その個性は今でも薄れていない。