2006F1最終戦「ありがとうミハエル」

アロンソが絶対的有利

 2006年のF1もこのブラジルGPが最終戦。前戦の日本GPが始まるまでは逆転でミハエル・シューマッハ(フェラーリ)が有利だったが、37周目にエンジンから白煙を上げリタイア。信頼性の高いフェラーリエンジンが決勝レースでブローしたのはなんと6年ぶりとのこと。今年最後となるミハエルにタイトルが傾きかけていたが、優勝したフェルナンド・アロンソ(ルノー)と10ポイント差となり、タイトル獲得の可能性はほとんどなくなってしまった。
 ミハエル最後のレースの見所は、この1レース素晴らしいレースを期待するだけになった。後は神の悪戯を期待するだけだろう。

地元マッサがポールポジション

地元マッサがポールポジション

 土曜日の予選では、順当にトップチームが最終ピリオドまで勝ち残るが、ジェンソン・バトン(ホンダ)は電気系のトラブルにより14位とトップ10入りはならなかった。
 そして、第1・第2ピリオドで速さを見せつけたのがミハエルとフェリペ・マッサのフェラーリコンビだ。ライバルチームが1分11秒台で激しいポジション争いをする中、フェラーリの2台は唯一1分10秒台に入れ、ミハエル最後のレースでフェラーリの1−2フィニッシュとなりそうな勢いだ。マッサも地元GPということで気合が入っているだろう。
 しかし、最終ピリオドが始まった直後、ミハエルのマシンはスピードが乗らずタイム計測無しでそのままピットへ。燃料系のトラブルにより10番手のポジションからのスタートを余儀なくされる。マッサは順調にポールポジションを獲得し、チャンピオンシップトップのアロンソは4番手スタートだ。

アロンソが2年連続チャンピオン獲得

アロンソが2年連続チャンピオン獲得

 予選から一夜明け行われた決勝レースでは、1周目にウィリアムズのマーク・ウェバーとニコ・ロズベルグのチームメイト同士が接触しいきなりリタイア。ロズベルグのマシンの破片をコース上から撤去するため、2周目にセーフティカーによりレースがコントロールされる。今年のブラジルGPも荒れる気配だ。
 6周目にセーフティカーが外れレース再開。1周目にミハエルは6番手までポジションを上げ、前を走るジャンカルロ・フィジケラ(ルノー)の隙を狙っている。8周目に遂にミハエルがフィジケラをパス。しかし、その直後ミハエルの左リアタイヤがパンクし、タイヤ交換のためピットイン。最後尾からの追い上げを余儀なくされた。
 フィジケラをオーバーテイクした直後、フィジケラのフロントウィングとミハエルの左リアタイヤが接触したようだ。前回の鈴鹿、そしてブラジルの予選とまるで天使から見放されたかのような運の悪さだ。

アロンソが2年連続チャンピオン獲得

 レースは終始ミハエルのチームメイトであり、地元ブラジルのマッサがトップを快走。ミハエルがパンクした直後はミハエルを周遅れにしそうな勢いと絶好調だ。アロンソも20周目に2位に上がると安定したレース運びでチャンピオン獲得は間違いないだろう。そもそも、マッサがこのままトップでゴールした瞬間に、アロンソのチャンピオンが確定する。リタイアしないようにマシンをいたわりゴールするのが最も大切だ。

アロンソが2年連続チャンピオン獲得

 結局レースはマッサが優勝し、この瞬間にアロンソの年間の王者が確定した。アロンソが2位に入り、予選で14番手だったバトンが3位表彰台を獲得した。そして4位には最後尾から追い上げ、終盤にはフィジケラやバトンのオーバーテイクショーを見せてくれたミハエル・シューマッハが入り、自身のF1最終戦を4位で終えた。5位キミ・ライコネン(マクラーレン・メルセデス)、6位フィジケラ、7位ルーベンス・バリチェロ(ホンダ)、8位ペドロ・デ・ラ・ロサ迄が入賞。そして今回10位にスーパー・アグリの佐藤琢磨が入賞。最終戦でベストリザルトを記録すると共に、同僚の山本左近は16位完走だが、ベストラップは全ドライバーの中で7番目の好タイムを記録して最終戦を終えた。

ありがとうミハエル

ありがとうミハエル

 ミハエル・シューマッハは91年の第11戦ベルギーGPでジョーダンチームからF1デビューし、翌レースにはベネトン(現ルノー)に電撃移籍。翌年にはベネトンで初優勝を遂げ、94−95年にベネトンチームでチャンピオンに輝いた。そして、当時は低迷していたフェラーリに96年に移籍。当初苦戦するものの、ミハエル中心のチームを創りあげ、00−04はフェラーリに久々の栄冠をもたらした。
 ミハエルは、7度の世界タイトルと91回の優勝。そして68回のポールポジションなど、数々の記録を打ち立てた、誰もが認める最強のチャンピオンだ。今年2年連続チャンピオンに輝いたアロンソも、ミハエルを打ち負かして獲得したチャンピオンだからこそ価値があると言っている。人気の点では故アイルトン・セナに負けるかもしれないが、歴史に残る偉大なチャンピオンである。まだ続けられるスピードを持ちながら引退するのは、幸せだろうがもったいないとも思う。が、今までありがとうと言いたい。

07F1はトップドライバーの移籍で始まる

07F1はトップドライバーの移籍で始まる

 07年のF1はチャンピオンのフェルナンド・アロンソがマクラーレン・メルセデスに移籍し、キミ・ライコネンがフェラーリに移籍する。アロンソが抜けたルノーはテストドライバーのヘイキ・コバライネンが正ドライバーに昇格する。トップを争うチームのドライバーがそれぞれ移籍・引退することで、来年のF1勢力図が大きく変わる可能性がある。
 来年はエンジンの開発が凍結されるため、エアロダイナミックスを中心に各チームがマシンを製作するが、マクラーレンとアロンソ、フェラーリとライコネンの相性は未知数。マクラーレンは今年トラブルが多かったからアロンソが簡単にチャンピオンを獲得出来るとは思えない。面白いレースが増えるだろう。

07F1はトップドライバーの移籍で始まる

 そして、今年1年目だったスーパー・アグリも2年目となり今年より期待できるだろう。なんといっても、最終戦のブラジルGPでは下位ながらしっかりレースをしていたし、来年はホンダのテストドライバーだったアンソニー・デビッドソンの加入が噂され、ドライバーラインアップも強力になる。
 もちろん、今年39年ぶりの優勝を遂げたホンダも速さを取り戻しつつある。トヨタは中盤に埋もれてしまっているが、時折素晴らしい速さを見せるので、安定性があればいい結果が出るだろう。
 大きく変わる07年のF1に注目である。

2年連続ダブルタイトルを獲得した、ルノーF1チーム

2年連続ダブルタイトルを獲得した、ルノーF1チーム