トルクフルで滑らかな加速が味わえる
ターボとスーパーチャージャーというふたつの過給器を装着して大量の空気と燃料を送り込むことで、1.4リッターエンジン2.4リッター並みの仕事をさせるのがTSIエンジンの特徴。しかも低速域から働くスーパーチャージャーと、高速域で働くターボチャージャーを併せ持つことで、低回転域から高回転まで幅広い領域でパワフルかつトルクフルな実力を発揮する。
またベースが直噴エンジンなのでシリンダー内の温度上昇を抑えられ、圧縮比を高めて効率の良いエンジンに仕上げることもできたのがTSIエンジンの特徴である。
今回のゴルフトゥーランでは新たに140ps仕様のエンジンが搭載されたが、これがなかなかデキの良いものだった。絶対的なパワーでは30ps劣るし、トルクも2kgmの違いがあるが、パワーが20%ほど劣る割にトルクは10%足らずの違いでしかなく、低速域でのトルク感のある走りは170psとの違いが少ない。実用的には140ps仕様で十分といえるだろう。
高回転域まで回して元気良く走らせようとすると、170ps仕様のほうが格段に優位に立つが、ミニバンでは必ずしもそうした走り方は似合わない。170ps仕様には魅力的な充実装備が用意されるので、それと合わせてどちらを選ぶかという問題になるだろう。
スムーズな変速が魅力のDSGを新たに搭載した
6速ATからDSGに変わったトランスミッションも好ましいフィール。ショックの少ないスムーズな変速が極めて俊敏に行われる。コストの問題があるにしても、今後の主力トランスミッションとなっていくだろう。
足回りはやや硬めの乗り味ながら、乗り心地にも優れており、ドイツ車でありながらもミニバンであることを意識した設定。ミニバンのボディに見合ったブレーキ性能も満足できるものだ。
●お勧めグレード
140psのエンジンを搭載したトレンドラインで十分という印象。トレンドラインは従来の1.6Eに比べると、本革巻きのステアリングホイールやシフトノブがウレタン製に変更され、アルミホイールやスチールホイールになるなどやや仕様ダウンした面もあるが、逆に6速ATからDSGに変わったのは仕様アップといえる要素だし、ヒルホルダーが装備されたのも仕様が向上した部分。動力性能はTSIになることで大きく向上している。それでいて従来の1.6Eに比べて1万円安い価格設定はけっこう魅力的なものだ。
国産の小型ミニバンがオプション設定にしているEPSやSRSサイド&カーテンエアバッグが標準で装備されることなどを考えると、国産ミニバンにも対抗できるリーズナブルな価格設定といえる。
170ps仕様のハイラインになると、充実した快適装備が用意されるものの価格差が50万円というのはいかにも大きい。装備や仕様の差、エンジン性能の差などを積み上げていくと50万円くらいに相当するのは分かるが、絶対的な価格差が50万円もあると、ひとクラスかふたクラスくらい上のクルマを買うような印象になる。オプションでカーナビを装着することを考えると、ますますお勧めはトレンドラインということになる。