専用装備を満載したタイプSが追加された
ホンダのスポーツカーS2000は、1999年4月に発売された。ホンダとしては4輪乗用車市場に参入した当初のモデル以来、久々のFR駆動のモデルとなったほか、ハイXボーンフレームという独特のボディ構造により、オープンカーとしては極めて高いボディ剛性を確保するなど、特徴的なクルマだった。
その後、可変ギアレシオステアリングを採用したタイプVを設定したり、搭載エンジンの排気量を2.0Lから2.2Lに拡大(車名はS2000のまま)するなどの改良を重ねてきた。
そのS2000が改めてマイナーチェンジを受け、全タイプにVSAやサテライトスピーカーを採用したほか、内外装専用の仕様を備えたタイプSを設定した。一説によると、今回のマイナーチェンジで登場したモデルはS2000のファイナルバージョンではないと言われているが、ホンダ関係者に尋ねたところ、大慌てで否定していたので、ファイナルバージョンである可能性はとても高いと思う。
試乗したタイプSには大型のフロントスポイラーやリヤにもウイングタイプのスポイラーが装着され、見るからにそれらしい雰囲気を備えている。今回は都内での試乗だったが、ちょっと目立ちすぎてやだな、と思わせるくらいに特徴的な外観に仕上がっている。
搭載エンジンは特に変更を受けておらず排気量を2.2Lに拡大したときからのもの。排気量の拡大はトルクの増大につながり、より走りやすいエンジンに仕上がっている。
従来の2.0Lエンジンのほうが良く回ったのは確かだが、現在の2.2Lエンジンも許容回転数は8000回転で、最高出力の発生回転数は7800回転、最大トルクは6500〜7500回転という超高回転型のエンジンである。相変わらず良く回るし、回したときのパワー感も相当なもの。今回の試乗ではその魅力を十分に味わうだけの余裕はなかったが、魅力の片鱗を感じることはできた。
6速MTのトランスミッションがまた良い。自然に手を置いたその位置にあるシフトノブが、とても短いストロークでピシッと決まり、小気味よくシフトできるのだ。シフト操作するのが楽しくなる感じである。小径のステアリングホイールは操舵したときの手応えも十分で、操舵に応じて確実に向きを変え、キビキビした走りに貢献している。
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しなやかな足まわりは安定感もハイレベル!
タイプS専用にチューンされた足回りは相当に硬めの味付けながら、ゴツゴツした感じの乗り心地ではなく、角の尖った部分が丸くなった感じ。しっかりした安定感のある走りを見せると同時に、少々路面が荒れたところでも突き上げが抑えられている。実はこの日はシビックタイプRにも試乗したのだが、タイプRのほうはガチガチに硬い足回りになっていたので、それとの比較でタイプSの乗り味が良く感じられた部分もある。
標準車のS2000の価格が386.4万円であるのに対し、タイプSの価格は399万円の設定。仕様の違いがいろいろと設けられている割には、価格差は小さめに設定されている。とはいえ、400万円近い価格を出すなら、ランサーエボリューションXやインプレッサWRX STIも買える。オープンカーのS2000とは単純な比較はできないが、格段にパワフルなエンジンを搭載し、先進的なシャシー技術も盛り込んだエボXやWRXより高い価格設定ではそうそうたくさん売れることにはならないだろう。
S2000はほかにはない特徴的な価値を持つクルマだが、その価値が持つ世界は相当に狭いのが現実である。逆にそのことが将来的なリセールバリューで有利に働く可能性もある。タイプSが本当にファイナルバージョンになったなら、リセールバリューへの期待はさらに高まる。
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代表グレード
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タイプS
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ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高)
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4135×1750×1285mm
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車両重量[kg]
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1260kg
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総排気量[cc]
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2156cc
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最高出力[ps(kw)/rpm]
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242ps(178kw)/7800rpm
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最大トルク[kg-m(N・m)/rpm]
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22.5kg・m(221N・m)/6500〜7500rpm
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ミッション
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6速MT
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10・15モード燃焼[km/l]
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11.0km/l
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定員[人]
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2人
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税込価格[万円]
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399.0万円
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発売日
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2007/10/25
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レポート
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松下宏
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写真
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和田清志
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