試乗したのはSL350とSL63AMGだ。最初にステアリングを握ったのはSL63AMGである。バンパーやリアのスポイラーリップ、マフラーなどによってAMGらしさを表現しているが、派手さはない。6.2リッターのV型8気筒DOHCエンジンは525ps/64.2kg-m(386kW/630N・m)を絞り出す。これに7速ATの7Gトロニックを進化させたAMGスピードシフトMCTを組み合わせている。GT−Rの2ペダルMTに似た7速のセミATは、ドライバーの走行スタイルに合わせて「コンフォート」、「スポーツ」、「スポーツプラス」、「マニュアル」の4つのモードを設定した。コンフォートと比べ、2つのスポーツモードはギアチェンジのタイミングを早め、変速も高回転寄りとなる。
V8エンジンは始動した直後から高性能であると窺い知れ、音色も惚れ惚れするほどいい。もちろん、高回転のパンチ力は鋭いし、加速も冴えていた。変速は滑らかだ。その気になれば6500回転まで無理なく使いきることができ、そのときの加速は強烈だった。エンジンとともに特筆したいのがサスペンションの仕上がりである。自慢のアクティブ・ボディコントロール(ABC)サスペンションにより、なめるように路面をトレースしていく。2トンに迫る重量ボディを意識させない軽快なハンドリングで、荒々しさを上手に包み込んでいる。19インチのロープロファイルタイヤを履いているにも関わらず乗り心地も悪くない。
SL350は316ps/36.7kg-m(232kW/360Nm)にパワーアップされた3.5リッターのV6エンジンを積む。さすがにAMGから乗り換えると刺激性は薄い。だが、高回転域をキープしての走りが愉しいクルマだ。7000回転まで気持ちよく回り、レスポンスもシャープだった。電子制御7速ATも滑らかにつながる。ハンドリングの洗練度も高い。耐久性とコーナーでも狙ったラインに気持ちよく乗せることが可能だ。