ザ・対決 フォルクスワーゲン ゴルフ6 VS アルファロメオ ミト
輸入ハッチバック編
フォルクスワーゲン ゴルフ6 vs アルファロメオ ミト

 欧州といえば、B/Cセグメントと呼ばれるコンパクトクラスがじつに豊富だ。そのなかで、王者に君臨しているのが、フォルクスワーゲンのゴルフ6。FF、そして2ボックス・ハッチバックというコンセプトを確立した立て役者だが、保守的にならず、TSIエンジンやツインクラッチのDSGの採用など、常に革新性をもって進化し続ける。
 そしてコンパクト指向の強まりはアルファロメオにも影響を及ぼし、初のBセグメントとなるミトをリリースしてきた。エンジンは小排気量をターボ過給するなど、コンセプトだけで見ればゴルフ6に似たものがあるが、実際のクルマ作り、そして味付けはまったく異なり、コンパクトになってもやはりアルファロメオといったところか。それだけに今回の対決は対極的な内容に。果たして結果は!?

佐藤まいみ
PHOTO/佐藤靖彦 構成・文/近藤暁史
モデル/ 佐藤まいみ

ROUND1:ファーストインプレッション

フォルクスワーゲン ゴルフ6
フォルクスワーゲン ゴルフ6 リヤ
派手さはないものの、進化は着実
気になる質感も大きくアップ

 世界のFF2ボックスのベンチマークとして、初代より君臨してきたフォルクスワーゲン ゴルフ。もちろんそれは最新の6代目になっても変わらない。ボディサイズは全長で5mm。さらに全幅は30mmも拡大されて1790mmとなっており、ひと回りほど拡大された。とはいえ、ベースの基本骨格は先代をキャリーオーバーしており、デザインもフロント部分に若干の変化があるものの、変わった感はあまりないというのが正直なところ。
 もちろんそれがゴルフ6の持ち味であり、安心できる点だろう。そのパッケージングは奇をてらわず、質実に徹したもので、前後シートともしっかりと余裕をもって座ることができるのはやはりゴルフ6ならではといったといったところ。全体の質感もさらに高められているのだが、今までは少々さみしかっただけに、これも6代目のトピックスのひとつだろう。
 そして、今やパッケージングに加えて、ゴルフ6の名を揺るぎないものにしているのが、エンジン&パワートレイン系だ。この点も先代譲りで、TSI+DSGの組み合わせを継承。TSIはコンフォートラインがターボのみのシングルチャージ(120ps/20.4kg-m)。ハイラインはスーパーチャージャーとターボのツインチャージ(160ps/24.5kg-m)となる。その内容には磨きをかけているのだが、とくにミッションは大きく進化した。
 先代ではシングルチャージのDSGは6速だったのが、今回は7速のみの設定となっている。また7速の場合、クラッチは乾式(6速は湿式)で、この制御もより熟成が図られ、ギクシャク感はほぼ完全に消され、より滑らかな走りを実現している。

[エコ&燃費]
 1.4リッター+ターボ過給。さらに7速DSGとの組み合わせという先代と同じスタイルながら、さらに磨きをかけてシングルだけでなく、ツインジャージですら、16km/L台という驚きの燃費を実現しているのはさすが。

[安全性能]
 もちろん電子制御を大量に装備。横滑りを防止するESPは最新のプログラムを投入する。左右の路面状況に差がある場合でも安定させるDSRや発進をスリップしやすい路面での発進を助けるなどをESPが総合制御している。

[取材時実測燃費]
12.2km/L

[フォルクスワーゲン ゴルフ6価格帯]
275.0〜312.0万円

アルファロメオ ミト
アルファロメオ ミト リヤ
アルファロメオ初のカテゴリー
ターボで、走りと省燃費を両立

 従来の147よりもひと回り小さく、ベースとなったのはフィアットのグランデプントで、アルファロメオとしては初のカテゴリーだけにベイビーアルファと呼ばれていたりもする。ただし、そのスタイルは超プレミアムモデルである8Cをモチーフしたもので、とくにフロントまわりを中心に独特な丸みを帯びたデザインでまとめられている。少しばかりマーチっぽく見えてしまうが……。
 インテリアもクラスを感じさせない高級感が漂う。単眼式のメーターや丸いエアコンの吹き出し口なども毎度のアルファロメオテイストである。シートは標準のファブリックに加えて、ポルト・ロウナ・フラウ製の表皮を使ったレザーシートも用意されており、こちらのほうがじつにアルファロメオらしい。予算に余裕があればオススメのオプションだ。
 走りに関しては、相変わらずATが用意されない(できない)ので、6速MTのみというのは国内での使用を考えるとさみしいところ。ただエンジンはグランデプントの1.4リッターにターボを組み合わせたもので、155psものパワーはパンチも十分。クロスしたギア比もあって、キビキビとした走りを楽しむことができる。このあたりはアルファロメオの真骨頂だ。
 また注目なのは、D.N.A.システムと呼ばれる装備でボタンひとつでダイナミック/ノーマル/オールウェザーの3つのモードを選ぶことができるのだが、ダイナミックを選ぶとブースト圧が変わり、トルクが3kg-mもアップし、パワステのアシスト量も変化することでよりスポーティな味わいが高まるといううれしい装備だ。

[エコ&燃費]
 エコ技術に関しては完全に出遅れているイタリア車。ミトもご多分に漏れず、とくにこれといった技術を採用していない。せいぜい小排気量であるということぐらいか。効率のいいミッションという点でも未だにMTのみというのはさみしい。


[安全性能]
 一方、安全性については力が入っている。横滑りを防止するVDCだけでなく、7つのエアバッグや坂道発進をアシストするヒルホールドシステムなどを採用する。ユーロNCAPで5つ星を獲得している。

[取材時実測燃費]
11.3km/L

[アルファロメオ ミト価格帯]
285.0万円

フォルクスワーゲン ゴルフ6 TSIコンフォートライン
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
4210×1790×1485mm
車両重量
1290kg
エンジンタイプ
直列4気筒DOHCターボ
総排気量
1389cc
最高出力
122ps(90kw)/5000rpm
最大トルク
20.4kg-m(200N・m)/1500〜4000rpm
ミッション
7速DSG
10・15モード燃費
16.8km/l
サスペンション(前/後)
ストラット/4リンク
ブレーキ(前/後)
ベンチレーテッドディスク/ディスク
税込価格
275.0万円
アルファロメオ ミト 1.4Tスポーツ
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
4070×1720×1475mm
車両重量
1220kg
エンジンタイプ
直列4気筒DOHCターボ
総排気量
1368cc
最高出力
155ps(114kw)/5500rpm
最大トルク
20.5kg-m(201N・m)/5000rpm
ミッション
6速MT
10・15モード燃費
未公表
サスペンション(前/後)
ストラット/トーションビーム
ブレーキ(前/後)
ベンチレーテッドディスク/ディスク
税込価格
285.0万円
フォルクスワーゲン ゴルフ6 1.4リッターターボエンジン

エンジンはもはやお馴染みとなった1.4リッターのTSI。コンフォートライン(写真)はシングルチャージ仕様を搭載している。

フォルクスワーゲン ゴルフ6 16インチホイール

コンフォートライン(写真)は16インチ、ハイラインは17インチ仕様となる。ドイツ車らしい安定感としなやかな乗り味が魅力だ。

アルファロメオ ミト 1.4リッターターボエンジン

低回転域でも十分なトルクを生み出すターボエンジン。だがその真価はやはり高回転域でのレスポンスやパワー感にあるといえる。

アルファロメオ ミト 17インチホイール

ハンドリングの気持ちよさは、さすがアルファロメオならではのもの。ただ、人によっては限界付近の特性がピーキーに感じる場合も。

フォルクスワーゲン ゴルフ6 インパネ

ドイツ車らしい質実剛健とした雰囲気のインテリア。この6代目になって各部の質感が大幅に高められ、上質さも獲得した。

フォルクスワーゲン ゴルフ6 メーター

シンプルなデザインで、視認性にも優れている。インフォメーションディスプレーも表示が大きめでとても見やすい。

アルファロメオ ミト インパネ

立体的な造形のインテリアは好みの分かれるところか。ただ質感や使い勝手は思ったほど悪くはなく、大きな不満は感じられない。

アルファロメオ ミト メーター

タコメーターにアルファロメオのロゴを入れるなど、遊び心も取り入れられている。文字盤は大きいので視認性も悪くはない。

フォルクスワーゲン ゴルフ6 フロントシート

フロントシートは体をしっかりと包み込んでくれる形状。長距離ドライブでも疲れにくく、とても快適に過ごすことができる。

フォルクスワーゲン ゴルフ6 リヤシート

パッケージングに優れているのが歴代ゴルフの特徴だ。写真を見て分かるとおり、足元も頭上の空間もかなりの余裕がある。

アルファロメオ ミト フロントシート

ボディサイズがやや小さいこともあり、室内の広さはそれほどでもない。デザイン的にも適度なタイト感が演出されている。

アルファロメオ ミト リヤシート

後席は想像以上に広い。3ドアということもあり、乗り降りには気を遣うが、スペース自体は大人でも不満のないレベルといえる。

フォルクスワーゲン ゴルフ6 シフトレバー

ゴルフはダイレクト感ある走りと効率の良さが特徴のDSG採用する。湿式クラッチの6速はもちろん乾式の7速でも滑らかな変速を実現。

フォルクスワーゲン ゴルフ6 ステアリング

しっとりとしたステアリングフィールが魅力のゴルフ6。高速走行での安定感の高さは、さすがドイツ車らしい部分といえる。

アルファロメオ ミト シフトレバー

ミトにATは用意されず6速MTのみの設定。シフトフィールは素晴らしく、気持ちのいい走りが楽しめるが日常の使い勝手はやや劣る。

アルファロメオ ミト ステアリング

スイッチひとつで3つの走行モードを楽しめるD.N.A.システムを搭載。エンジンやステアリングの重さなどを自動的に制御する。

フォルクスワーゲン ゴルフ6 ラゲッジ

ラゲッジは開口部の広さ、容量ともに十分確保されている。中央部分にはトランクスルー用の小さな穴も設けられている。

フォルクスワーゲン ゴルフ6 ラゲッジ

後席の背もたれは左右別々に倒せるので、荷物の量や乗車人数にあわせて臨機応変にシートアレンジが可能で使いやすい。

アルファロメオ ミト ラゲッジ

ゴルフと比べるとラゲッジスペースは狭い。ただ、実用上困るほどではないので、よほど大きな荷物を積むのでなければ問題ない。

アルファロメオ ミト ラゲッジ

後席の背もたれは一体式となっており、大きな荷物を積むと2人乗りになってしまう。また段差も大きく使い勝手はあまり良くない。

フォルクスワーゲン ゴルフ6 vs アルファロメオ ミト

 フォルクスワーゲン ゴルフ6は、さすが世界のFF2ボックスのベンチマーク的存在だけあり、パッケージングや走り、そして快適性は申し分ない。TSIエンジンとDSGの組み合わせも絶妙で、滑らかでダイレクト感のある走行フィールが味わえる。もちろん燃費に関しても十分満足でき、安全装備や快適装備も充実しているので、満足度は高い。
 対するアルファロメオ ミトは、どちらかというと好き嫌いの分かれるクルマといえそうだ。このデザインや小気味いい走りが気に入ればこれ以上のクルマはないといえるが、使い勝手などの部分では正直、ゴルフ6に及ばない部分も多い。6速MTは燃費も悪くはなく気持ちいいフィーリングだが、渋滞など日常の使い勝手では今一歩だ。