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「気になるくるま」第4回 マツダ ルーチェ 1800(初代 1968)

ひとことでくるまと言っても、誰にも知られていないようなマイナーなものから、みんなの憧れのようなスーパーカーまで、実に様々です。そんなクルマたちの中から、マニアックカー・マニアでもある遠藤イヅルが、独断と偏見で選び出したくるまたちをイラストとともにみなさんにお送りいたします。第4回は、美しいジウジアーロ・デザインを持って登場した初代マツダ・ルーチェをお送りいたします。


◆ジウジアーロが描く美しく繊細なデザイン


「R360」と「キャロル」という軽自動車で乗用車市場に乗り込むことに成功したマツダは、「トヨタ コロナ」と「日産 ブルーバード」が販売競争を繰り広げている小型乗用車クラスへの進出を図ることとなりました。ですが後発のマツダはその「BC戦争」の市場にまずは飛び込まず、ファミリアを「ライトバン」として1963年に発売、さらに翌年にはバンの乗用仕様「ファミリアワゴン」を送り出し、このワゴンをセダンボディに改めた「ファミリア・セダン」をようやく1965年に小型乗用車クラスに投入したのでした。

いっぽう、マツダはファミリアの発売と並行してファミリアよりもさらにひとクラス上のモデルの開発を進めていました。それがこのルーチェです。1963年の東京モーターショーに試作車が出品されたのち、1966年、いよいよ市販型が登場。参考出品された試作車とは大幅にデザインを変えていましたが、試作車も市販型もどちらもジウジアーロ(ベルトーネ在籍時代)の手によるデザインを纏っていました。

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丸っこくて2灯式だった試作車から一転、市販型は当時流行した4灯式となり、逆スラントした薄いノーズにビルトインされました。直線基調のスリークなデザインのボディに開けられた窓は大きく、各ピラーは限りなく細くされています。この繊細なデザインは、ジウジアーロの代表作のひとつとしても数えられるほどに美しいものです。全長は4.3m超と試作車よりも30cm以上も伸び、それはそのまま伸びやかなデザインに活かされています。


◆ロータリエンジン搭載の前輪駆動車も少数生産


copyright_izuru_endo_2016_03_LUCE_1280_802(クリックで拡大)当初搭載されたエンジンは1.5リットル、チェーン駆動のSOHCで78psという高出力と低回転での豊富なトルクを特長としました。1967年にはツインキャブによって85psまで出力を高めたスポーティ仕様「ルーチェSS」が追加され、さらに高性能サルーンをアピールすることとなりました。そして1968年の暮れに、今回描いたクルマ、「ルーチェ1800」が登場しています。車名のとおりエンジンは1.8リットルで、最高出力は100psを誇りました。1500との違いは、ボンネットに追加されたいささか大仰なエアスクープの有無。これによって見た目の区別が可能ですが、このエアスクープはルーチェのオリジナルデザインの美しさを損ねているとも言われました。

また初代ルーチェには、ロータリーエンジンを積み当時では珍しい前輪駆動を採用した「ルーチェ・ロータリークーペ」も存在していました。デザインはセダンに似ていますが、ジウジアーロは関与していません。エンジンは13A型ロータリー。生産台数はわずか976台と言われています。

クリーンなデザインを持っていた初代ルーチェは、1972年に当時流行したコークボトルラインと少々装飾過多なデザインを持つ2代目にスイッチし、その使命を終えることになりました。


【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!

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