2017.8.9
ダイハツ ミライースvs スズキ アルト徹底比較 どっちのクルマがいいの?
※本記事内に安全装備への言及がありますが、安全装備には作動条件や限界があります。機能を過信せず、安全運転を心がけましょう。
ダイハツ ミライースは、2017年にフルモデルチェンジして2代目となり、ベーシックな軽自動車を目指してつくられ、ライバルであるスズキ アルトのようにエネチャージのような高価な機能は採用されていない。そのため、燃費性能はアルトが37.0㎞/Lなのに対して、ミライースは35.2㎞/Lとアルトに負けている。燃費にこだわったアルトと、低価格にこだわったミライースの実力を全8項目で徹底比較し、星の数で評価した。
目次・評価項目見出しをクリックすると各項目にジャンプします
1燃費の比較
ミライース
- ダイハツ ミライースの燃費は35.2㎞/Lとなっている。
アルト
- スズキ アルトの燃費は、37.0㎞/Lという低燃費を実現した。660㏄の軽自動車とはいえ、コンパクトカーのハイブリッド車並みの燃費を誇る。
燃費で比較すると、ミライースはアルトに負けている。大きな違いとしては、ミライースにはエネチャ―ジが付いていないからだ。ダイハツは、このクラスのモデルは価格を重要視しているということもあり、コスト高になるエネチャ―ジのような技術を採用していない。エネチャ―ジは、走行時のエンジン抵抗になる発電は行わないため、燃費が向上する。その代わり、減速時のエネルギーで発電し、発電した電力は通常の鉛バッテリーとエネチャージ用のリチウムイオンバッテリーに充電。通常走行時は、この電力を使って電装品を動かしているのだ。アルトは、その技術を採用し低燃費を達成できたのだ。
2価格比較
各車のおすすめグレードの価格は以下の通り。
- ダイハツ ミライース G“SA Ⅲ”
- 1,209,600円
- スズキ アルト X
- 1,134,000円
このクラスの軽自動車は、最上級グレードがおすすめだ。予算重視であれば、それ以外のグレードでも良いが、装備はかなり貧弱になっていく。低価格を売りとするミライースだが、価格はアルトを大きく上回る。これは、標準装備されている装備が異なるからだ。アルトにはない主な装備は、歩行者検知式自動ブレーキ、後退時の誤発進抑制機能、LEDヘッドランプ、オートハイビーム、サイドエアバッグなど。逆にアルトだけにある装備は、エネチャージが大きなところだ。こうした装備差を加味すると、価格的にはほぼ互角といったところだろう。
購入時の値引き額は?
ミライースは、デビュー直後ということで値引きはあまり期待できない。対してアルトは、ミライースと競合させれば、一定の値引き額が期待できる。ミライースも2018年くらいになれば、一定の値引きが期待できるようになるだろう。両車とも必ず競合させるのが基本となる。ただ、このタイプの軽自動車は、新車を値引きして買うというより未使用車がおすすめ。すでにアルトは未使用車が大量に流通。新車よりかなり安い価格で売られている。ミライースは新型になったばかりとあって、流通量が少ない。しかし、旧型はまだ大量に流通されているので旧型で納得できるのなら、かなり安い価格で買うことができる。2018年度が終わり4月くらいになると、ミライースの未使用車も大量に出てくると思われるので、そのタイミングまで待つというのがポイントになる。ただ、未使用車の場合、最上級グレードが少なく、中間グレードまたはそれ以下のグレードが多い。最上級グレードがほしいのであれば、新車を選ぶことになるだろう。
3内装デザイン比較
ミライース、アルト共にインパネデザインは、水平基調で広さをアピールするデザインが採用されている。両車とも2トーンカラーのインパネが用意されていて、質感も良好だ。
ミライースの内装デザイン特徴
- ミライースのメーターは、自発光式デジタルメーターが採用されていて高級感があり見やすい。フロントシート生地は、ベージュ系とブラックの2トーンカラーになっているが、リヤシートはブラックの単色。前後でややチグハグな印象がある。また、リヤシートのヘッドレストは、LとBグレードではオプションという状況。ヘッドレストは、衝突時に後席乗員の頸椎を守るための重要な安全装備。こうしたベーシックな安全装備さえもコストダウンする姿勢は情けなさを感じる。
アルトの内装デザイン特徴
- アルトのメーターはアナログ式、インパネデザインも非常にシンプルにまとめられている。ライトブルーのシート生地は、スッキリとしながら室内を明るく広く見せている。
リヤシートのヘッドレストは、L、F、VPグレードには装備さえできないというミライースよりもさらに残念な仕様となっている。L、F、VPの後席には乗車した乗員は、もしものときに、頸椎などに非常に大きな損傷を受けるリスクがある。
両車ともに残念なのが、リヤシートのヘッドレストが標準装備されていないということだ。
4室内空間と使い勝手
室内空間は、両車ともさすがともいえる広い空間をもつ。両車とも前席はヘッドレスト一体型のハイバックシートが採用されている。前席の座り心地や広さも互角。後席は、こちらも十分なスペースであり同等レベル。好みにもよるが、座り心地はミライースの方が硬めな印象だ。
前席の使い勝手は、ミライースが上回る。ミライースには、インパネロングアッパートレイや掘込み式インパネドリンクホルダー、ティッシュボックスや携帯電話が置けるセンターフロアトレーなどは、なかなか使い勝手がよい。ついでに両車ともスマートフォンなどが充電できるUSBコネクターなどの装備がほしいところだが、この機能はない。
小回りはどちらも大差なし
気になる小回り性能は、15インチタイヤを履くアルトが4.6m、13インチタイヤを履くモデルが4.2mとなる。ミライースは、14インチ&13インチタイヤとも4.4m。どちらも軽自動車らしい小回り性能をもつ。
5外装デザイン比較
ミライースとアルトのデザインは、全く異なる方向性となっている。ミライースは、先代モデルから大きく変化した。シャープなキャラクターライン使いでスポーティさと力強さをアピールする。先代は女性的だったが、現行モデルはかなり男らしいスタイルになった。
アルトもまた先代モデルから、大きく変化したデザインを採用。先代は女性的で万人受けするデザインだったが、個性が足りなかった。現行アルトは、まるでメガネでもしているような個性的なデザインを採用。愛嬌のある顔が特徴。
どちらのデザインが優れているというよりは、完全に好みの問題といった印象だ。小さくてもスポーティで力強いデザインが好きならミライース、軽自動車らしい小さくて可愛い雰囲気が好きならアルトという選択になるだろう。
6安全装備の比較
安全装備面では両車に大きな差がついた。ここは重要なポイントである。
- ミライース
- 先進予防安全装備では、ミライースが圧勝。ミライースには、歩行者検知式自動ブレーキなどの先進予防安全装備「スマートアシストⅢ」が用意されている。全車標準装備でないのは物足りないが、GとXには標準装備化。他のグレードでもオプション装着できる。また、このスマートアシストⅢには、前後の誤発進抑制や車線逸脱警報、オートハイビームも用意されているので、先進予防安全装備としては高いレベルにある。さらに、最上級グレードのGにはサイドエアバッグも標準装備化されているので、Gグレードは高い安全性能を誇る。ただし、このサイドエアバッグは、G以外オプションでも選択できないという状況は、非常に物足りない。
- アルト
- こうしたミライースの高い安全装備に対して、大きく引き離されてしまったのがアルトになる。アルトの自動ブレーキは、もはや旧式といえる「レーダーブレーキサポート」。30㎞/h以下で、対車両のみに有効。今となっては、ないよりましといった自動ブレーキになってしまった。また、誤発進抑制機能も前方のみで後方には対応していない。さらに、スズキはサイドエアバッグが嫌いなようで、アルトにはサイドエアバッグが装備できるグレードは残念ながらない。
7走行性能の比較
走行性能面では、ややアルトが勝る。これは、エンジンとCVTの特性によるものだ。車重はわずかにアルトが軽い。アルトのエンジンは、53ps/6,500rpm&63Nm/4,000rpm。対するミライースは、49ps/6,800rpm&57Nm/5,200rpmとなった。スペックからもわかる通り、ミライースのエンジンは高回転型なのにパワー&トルクで負けている。これは、燃費を重視した結果なのだろう。そのため、全域でアルトの方が力強くアクセルに対してのレスポンスが良い。気持ちよく走れる。
エンジンがよりパワフルで実用的なのに加え、アルトのCVTは副変速機付きCVTが採用され、このCVTがいい仕事をしている。エンジンの力を効率よく伝えながら、定速走行時には、エンジンの回転数を下げ低燃費化に貢献する。副変速機が装備されていることで、ミライースよりもワイドな変速比になっていることが大きなメリットだ。
そして、アルトには、パワフルなターボエンジンを搭載し足回りなどを強化したスポーツモデルであるアルトターボRSやアルトワークスも存在する。こうしたスポーツグレードの設定は、ミライースにはない。
8リセールバリュー比較
リセールバリューとは、新車で購入した車が3年後にどの位の価値が残っているかを指標化したもので、リセール(再び売る)時の価値(バリュー)を残価率で示す。
ミライース L SAⅢ 58~64%
アルト X 57~63%
中古車大手のガリバー調べによると、3年後のリセールバリューはミライースL SAⅢ が 58%〜64%。アルトXが57%〜63%となった。ほぼ互角という数字だ。このクラスの軽自動車は、あまり人気がないとはいえ、なかなかのリセールバリュー値となっている。そのため、どのモデルを選んでも大差はないということになる。ただ、不安要素もある。最近では、歩行者検知式自動ブレーキを含んだ先進予防安全装備を装備したクルマの人気が高い。こうしたニーズが、このクラスにも強く求められるとすると、ミライースのSAⅢ付きモデルのリセールバリューはさらにアップする可能性がある。自らの安全面を考えても、歩行者検知式自動ブレーキを装備したモデルを選ぶといいだろう。アルトもマイナーチェンジでそうした装備が今後装着できるようになるかもしれない。
9今の車を高く売る方法
ミライースとアルトを売却する際は、必ず買取店へ行き今の正しい価格を知ることが重要だ。ミライースならダイハツ、アルトならスズキと同じメーカーのディーラー系なら、高値で下取ってくれるだろうが、他メーカーの下取り車ならそうはいかない。中古車ですぐに売れるようなタイプのクルマではないため、他メーカーでは再販リスクを避けるため下取り価格をかなり低めにする可能性が高い。
買取店は、マーケットの状況で価格を判断するため、比較的公正な価格になる。同じような買取店でも、自社で中古車として販売ができる買取店はさらに高値が付く可能性がある。再販時にオークションを経由しないので、中間マージンがない。これにより、高値で買取りできるのだ。まずは今のクルマの買取相場をチェックしてみては。
まとめ・総合評価
昨今、軽自動車で人気が高いのはホンダN-BOXやダイハツ タントなどスーパーハイト系であるが、ミライースやアルトなどベーシックな軽自動車も生活の足として価格や燃費を重視したクルマとして一定のニーズがある。
維持費がかからないことは魅力的ではあるが、クルマである以上、安全性能は非常に重要なポイント。いくら足代わりといっても歩行者と衝突したり、誤発進して大きな事故を起こしてしまったら人生も変わってしまう。特に、後席にヘッドレストのないグレードを買って、家族を後席に乗せて事故に合えば、頸椎に重傷を負うリスクは高い。そのため、安全装備より価格優先の購入はおすすめできない。それでも安く買いたい、というのであれば、安全装備が付いている中古車をおすすめする。未使用車が多く流通しているため未使用車という選択肢もよい。
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クルマ評論家 CORISM代表
大岡 智彦 氏CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員
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ダイハツ ミライースは、2017年にフルモデルチェンジして2代目となり、ベーシックな軽自動車を目指してつくられ、ライバルであるスズキ アルトのようにエネチャージのような高価な機能は採用されていない。そのため、燃費性能はアルトが37.0㎞/Lなのに対して、ミライースは35.2㎞/Lとアルトに負けている。燃費にこだわったアルトと、低価格にこだわったミライースの実力を全8項目で徹底比較し、星の数で評価した。
- 目次・評価項目見出しをクリックすると各項目にジャンプします
ダイハツ ミライースの特徴
低燃費・低価格にこだわったミライースは、このクラスでは唯一の歩行者検知式自動ブレーキを装備。安全性能も高いレベルにある。
スズキ アルトの特徴
とにかく、燃費にこだわっている。燃費を向上させる軽量化技術やエネチャージなどを搭載し、軽自動車トップの37.0㎞/Lという低燃費を実現。
1燃費の比較
ミライース
全ダイハツ ミライースの燃費は35.2㎞/Lとなっている。
アルト
スズキ アルトの燃費は、37.0㎞/Lという低燃費を実現した。660㏄の軽自動車とはいえ、コンパクトカーのハイブリッド車並みの燃費を誇る。
燃費で比較すると、ミライースはアルトに負けている。大きな違いとしては、ミライースにはエネチャ―ジが付いていないからだ。
ダイハツは、このクラスのモデルは価格を重要視しているということもあり、コスト高になるエネチャ―ジのような技術を採用していない。
エネチャ―ジは、走行時のエンジン抵抗になる発電は行わないため、燃費が向上する。
その代わり、減速時のエネルギーで発電し、発電した電力は通常の鉛バッテリーとエネチャージ用のリチウムイオンバッテリーに充電。
通常走行時は、この電力を使って電装品を動かしているのだ。アルトは、その技術を採用し低燃費を達成できたのだ。
2価格の比較
各車の売れ筋グレードの価格は以下の通り。
- ダイハツ ミライース G“SA Ⅲ”1,209,600円
- スズキ アルト X1,134,000円
このクラスの軽自動車は、最上級グレードがおすすめだ。予算重視であれば、それ以外のグレードでも良いが、装備はかなり貧弱になっていく。低価格を売りとするミライースだが、価格はアルトを大きく上回る。これは、標準装備されている装備が異なるからだ。アルトにはない主な装備は、歩行者検知式自動ブレーキ、後退時の誤発進抑制機能、LEDヘッドランプ、オートハイビーム、サイドエアバッグなど。逆にアルトだけにある装備は、エネチャージが大きなところだ。こうした装備差を加味すると、価格的にはほぼ互角といったところだろう。
購入時の値引き額は?
ミライースは、デビュー直後ということで値引きはあまり期待できない。対してアルトは、ミライースと競合させれば、一定の値引き額が期待できる。ミライースも2018年くらいになれば、一定の値引きが期待できるようになるだろう。両車とも必ず競合させるのが基本となる。ただ、このタイプの軽自動車は、新車を値引きして買うというより未使用車がおすすめ。すでにアルトは未使用車が大量に流通。新車よりかなり安い価格で売られている。ミライースは新型になったばかりとあって、流通量が少ない。しかし、旧型はまだ大量に流通されているので旧型で納得できるのなら、かなり安い価格で買うことができる。2018年度が終わり4月くらいになると、ミライースの未使用車も大量に出てくると思われるので、そのタイミングまで待つというのがポイントになる。ただ、未使用車の場合、最上級グレードが少なく、中間グレードまたはそれ以下のグレードが多い。最上級グレードがほしいのであれば、新車を選ぶことになるだろう。
3内装デザイン比較
ミライース、アルト共にインパネデザインは、水平基調で広さをアピールするデザインが採用されている。両車とも2トーンカラーのインパネが用意されていて、質感も良好だ。
ミライース 運転席
アルト 運転席
ミライース インパネ
アルト インパネ
ミライースの内装デザイン特徴
ミライースのメーターは、自発光式デジタルメーターが採用されていて高級感があり見やすい。フロントシート生地は、ベージュ系とブラックの2トーンカラーになっているが、リヤシートはブラックの単色。前後でややチグハグな印象がある。また、リヤシートのヘッドレストは、LとBグレードではオプションという状況。ヘッドレストは、衝突時に後席乗員の頸椎を守るための重要な安全装備。こうしたベーシックな安全装備さえもコストダウンする姿勢は情けなさを感じる。
アルトの内装デザイン特徴
アルトのメーターはアナログ式、インパネデザインも非常にシンプルにまとめられている。ライトブルーのシート生地は、スッキリとしながら室内を明るく広く見せている。 リヤシートのヘッドレストは、L、F、VPグレードには装備さえできないというミライースよりもさらに残念な仕様となっている。L、F、VPの後席には乗車した乗員は、もしものときに、頸椎などに非常に大きな損傷を受けるリスクがある。
両車ともに残念なのが、リヤシートのヘッドレストが標準装備されていないということだ。
4室内空間と使い勝手
ミライース 前席
アルト 前席
室内空間は、両車ともさすがともいえる広い空間をもつ。両車とも前席はヘッドレスト一体型のハイバックシートが採用されている。前席の座り心地や広さも互角。後席は、こちらも十分なスペースであり同等レベル。好みにもよるが、座り心地はミライースの方が硬めな印象だ。
ミライース 後席
アルト 後席
前席の使い勝手は、ミライースが上回る。ミライースには、インパネロングアッパートレイや掘込み式インパネドリンクホルダー、ティッシュボックスや携帯電話が置けるセンターフロアトレーなどは、なかなか使い勝手がよい。ついでに両車ともスマートフォンなどが充電できるUSBコネクターなどの装備がほしいところだが、この機能はない。
ミライース 荷室
アルト 荷室
小回りはどちらも大差なし
気になる小回り性能は、15インチタイヤを履くアルトが4.6m、13インチタイヤを履くモデルが4.2mとなる。ミライースは、14インチ&13インチタイヤとも4.4m。どちらも軽自動車らしい小回り性能をもつ。
5外装デザイン比較
ミライースとアルトのデザインは、全く異なる方向性となっている。ミライースは、先代モデルから大きく変化した。シャープなキャラクターライン使いでスポーティさと力強さをアピールする。先代は女性的だったが、現行モデルはかなり男らしいスタイルになった。
アルトもまた先代モデルから、大きく変化したデザインを採用。先代は女性的で万人受けするデザインだったが、個性が足りなかった。現行アルトは、まるでメガネでもしているような個性的なデザインを採用。愛嬌のある顔が特徴。
どちらのデザインが優れているというよりは、完全に好みの問題といった印象だ。小さくてもスポーティで力強いデザインが好きならミライース、軽自動車らしい小さくて可愛い雰囲気が好きならアルトという選択になるだろう。
ミライース 外装
アルト 外装
ミライース 外装
アルト 外装
6安全装備の比較
安全装備面では両車に大きな差がついた。ここは重要なポイントである。
- ミライース
先進予防安全装備では、ミライースが圧勝。ミライースには、歩行者検知式自動ブレーキなどの先進予防安全装備「スマートアシストⅢ」が用意されている。全車標準装備でないのは物足りないが、GとXには標準装備化。他のグレードでもオプション装着できる。また、このスマートアシストⅢには、前後の誤発進抑制や車線逸脱警報、オートハイビームも用意されているので、先進予防安全装備としては高いレベルにある。さらに、最上級グレードのGにはサイドエアバッグも標準装備化されているので、Gグレードは高い安全性能を誇る。ただし、このサイドエアバッグは、G以外オプションでも選択できないという状況は、非常に物足りない。
- アルト
こうしたミライースの高い安全装備に対して、大きく引き離されてしまったのがアルトになる。アルトの自動ブレーキは、もはや旧式といえる「レーダーブレーキサポート」。30㎞/h以下で、対車両のみに有効。今となっては、ないよりましといった自動ブレーキになってしまった。また、誤発進抑制機能も前方のみで後方には対応していない。さらに、スズキはサイドエアバッグが嫌いなようで、アルトにはサイドエアバッグが装備できるグレードは残念ながらない。
7走行性能の比較
走行性能面では、ややアルトが勝る。これは、エンジンとCVTの特性によるものだ。車重はわずかにアルトが軽い。アルトのエンジンは、53ps/6,500rpm&63Nm/4,000rpm。対するミライースは、49ps/6,800rpm&57Nm/5,200rpmとなった。スペックからもわかる通り、ミライースのエンジンは高回転型なのにパワー&トルクで負けている。これは、燃費を重視した結果なのだろう。そのため、全域でアルトの方が力強くアクセルに対してのレスポンスが良い。気持ちよく走れる。
ミライース エンジン
アルト エンジン
エンジンがよりパワフルで実用的なのに加え、アルトのCVTは副変速機付きCVTが採用され、このCVTがいい仕事をしている。エンジンの力を効率よく伝えながら、定速走行時には、エンジンの回転数を下げ低燃費化に貢献する。副変速機が装備されていることで、ミライースよりもワイドな変速比になっていることが大きなメリットだ。
そして、アルトには、パワフルなターボエンジンを搭載し足回りなどを強化したスポーツモデルであるアルトターボRSやアルトワークスも存在する。こうしたスポーツグレードの設定は、ミライースにはない。
8リセールバリュー比較
リセールバリューとは、新車で購入した車が3年後にどの位の価値が残っているかを指標化したもので、リセール(再び売る)時の価値(バリュー)を残価率で示す。
ミライース L SAⅢ 58~64%
アルト X 57~63%
中古車大手のガリバー調べによると、3年後のリセールバリューはミライースL SAⅢ が 58%〜64%。アルトXが57%〜63%となった。ほぼ互角という数字だ。このクラスの軽自動車は、あまり人気がないとはいえ、なかなかのリセールバリュー値となっている。そのため、どのモデルを選んでも大差はないということになる。ただ、不安要素もある。最近では、歩行者検知式自動ブレーキを含んだ先進予防安全装備を装備したクルマの人気が高い。こうしたニーズが、このクラスにも強く求められるとすると、ミライースのSAⅢ付きモデルのリセールバリューはさらにアップする可能性がある。自らの安全面を考えても、歩行者検知式自動ブレーキを装備したモデルを選ぶといいだろう。アルトもマイナーチェンジでそうした装備が今後装着できるようになるかもしれない。
9今の車を高く売る方法
ミライースとアルトを売却する際は、必ず買取店へ行き今の正しい価格を知ることが重要だ。ミライースならダイハツ、アルトならスズキと同じメーカーのディーラー系なら、高値で下取ってくれるだろうが、他メーカーの下取り車ならそうはいかない。中古車ですぐに売れるようなタイプのクルマではないため、他メーカーでは再販リスクを避けるため下取り価格をかなり低めにする可能性が高い。
買取店は、マーケットの状況で価格を判断するため、比較的公正な価格になる。同じような買取店でも、自社で中古車として販売ができる買取店はさらに高値が付く可能性がある。再販時にオークションを経由しないので、中間マージンがない。これにより、高値で買取りできるのだ。まずは今のクルマの買取相場をチェックしてみては。
まとめ・総合評価
昨今、軽自動車で人気が高いのはホンダN-BOXやダイハツ タントなどスーパーハイト系であるが、ミライースやアルトなどベーシックな軽自動車も生活の足として価格や燃費を重視したクルマとして一定のニーズがある。
維持費がかからないことは魅力的ではあるが、クルマである以上、安全性能は非常に重要なポイント。いくら足代わりといっても歩行者と衝突したり、誤発進して大きな事故を起こしてしまったら人生も変わってしまう。特に、後席にヘッドレストのないグレードを買って、家族を後席に乗せて事故に合えば、頸椎に重傷を負うリスクは高い。そのため、安全装備より価格優先の購入はおすすめできない。それでも安く買いたい、というのであれば、安全装備が付いている中古車をおすすめする。未使用車が多く流通しているため未使用車という選択肢もよい。
- クルマ評論家 CORISM代表
大岡 智彦 氏
CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。
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