メルセデス・ベンツは、約20年振りとなる直6エンジンをフラッグシップセダンであるSクラスに搭載しS450として発売を開始した。この直6エンジンは、ISGと呼ばれる48Vモーターを組みあわせたマイルドハイブリッド方式を採用。3.0Lで電動スーパーチャージャーやターボも装着され、367PS (270kW)、最大トルク 500Nmを発生するパワフルな一台に仕上がっている。

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自動運転という未来を感じさせた6代目Sクラス
そんなSクラスに20年ぶりに直6復活
徹底したベルトレス化によりエコ化を加速
低燃費を達成した、パワフルな新世代直6エンジン
メルセデス・ベンツS450価格

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

自動運転という未来を感じさせた6代目Sクラス

現行Sクラスは、2013年にフルモデルチェンジし6代目。6代目Sクラスの特徴は、高い先進運転支援システムがが装備されたことだ。メルセデス・ベンツ自ら『知能を備えた』と呼ぶ先進テクノロジー「インテリジェントドライブ」、「レーダーセーフティパッケージ」などを搭載。現在では当たり前のようになっている歩行者検知式自動ブレーキや車線維持機能などをいち早く装備。最新のSクラスには、高速道路などでウインカーを出すと自動で車線変更してくれる機能もある。まさに、自動運転時代の到来を感じさせたモデルだ。

豊富なパワーユニット展開

また、Sクラスのパワーユニットは豊富だった。ガソリン車だけでなく、ハイブリッド、PHEV、ディーゼルと多彩にラインアップ。しかし、現在では随分整理され、ガソリン車が中心。PHEVもラインアップから消え、電動モデルはS450系のみとなってしまった。今回新規投入されたS450がSクラスのエントリーグレードとなっている。

S450は、「S450エクスクルーシブ」と13センチ全長が長く、後席の空間を広げた「S450ロング」も設定されている。

そんなSクラスに20年ぶりに直6復活

そんな6代目Sクラスに追加されたのが、S450。この新型S450には、20年振りとなる直6エンジンが搭載された。このエンジンは、「M256」型と呼ばれ、とても贅沢な仕様となっている。

3.0L直6エンジンには、ターボに電動スーパーチャージャーという2つの過給システム装備。エンジン単体で最高出力 367PS (270kW)、最大トルク 500Nm を発生する。このエンジンは、ISGなどのモーターを組み合わされることが前提として設計された。今後のメルセデス・ベンツの次世代エンジンとなる。

徹底したベルトレス化によりエコ化を加速

一般的に、直6エンジンは全長が長くなる。そのため、エンジンルームのスペースが大きくなることで、室内のスペースが小さくなるとされ、V型のエンジンに移行していった経緯がある。それなのに、あえて今、直6エンジンをあえて採用したのには意味があった。それは、より厳しくなるエミッションやCO2排出量に対応するためだった。

まず、直6エンジンは、エンジンを中心にホットスペースとコールドスペースというように左右分割して補器類を配置できるメリットがある。ホットスペースには、エンジン近接型の触媒が採用され、より早く触媒を温めることができるため、効率的な排出ガス処理を可能とした。これが、エミッションに対する部分だ。

環境を考慮しより優れた低燃費エンジンに進化

そしてCO2の排出量減、つまり低燃費化だ。より優れた低燃費エンジンにするため、まず徹底したベルトレス化が図られた。エアコン、ウォーターポンプなどが電動化されている。これらの装備は、これまでエンジン回転を動力源としていた。それが負荷になり燃費を悪化させていたのだ。電動化することで、負荷が減り燃費が良くなると。さらに、エンジン前部のベルト駆動 装置が不要となり、よりコンパクトなエンジンとなっている。

また、燃費やエミッションだけでなく、生産面でのメリットも直6エンジンにはあるという。直6はV6よりエンジンの部品点数が少ない。当然、コストは下がる。さらに、複数のエンジンを同一ラインで生産できるようになり、よりフレキシブルな生産ラインとなるメリットもあり、直6化することで生産コストも下がる効果があるという。

低燃費を達成した、パワフルな新世代直6エンジン

ベルトレス化に止まらず、低燃費化の技術は多岐にわたる。まず、過給機には電動スーパーチャージャーとツインスクロールターボを装着。ターボはシングルターボを採用。低・中回転域では、電動スーパーチャージャーで素早く過給。高回転時にはターボに切り替わる。
 
さらに、超低速域では、48VのISG(インテグレーテッド・スターター・ ジェネレーター)が威力を発揮。発進時は電気モーターによりトルクで瞬時にクルマを押し出す。その後、電動スーパーチャージャー、そしてターボとトルクの谷間が無くスムースにトルクが引く出す。全域でアクセル操作に対してレスポンスの良い力強いエンジンに仕上がっている。また、直6のメリットでもある振動の少ないスムースさが加わる。

最新のテクノロジーを搭載!

ISGは、エンジンとトランスミッションの間に配置された直結型。モーターは最高出力16kW、最大トルク250Nmを発生。0-100㎞/h加速は4.8秒と俊足なのも特徴だ。このISG技術は、三菱電機との共同開発によるものだ。

ISGなどによる新テクノロジーが搭載された結果、メルセデス・ベンツS450は、先代V6エンジン比で約20%のCO2排出量低減、15%の出力向上を実現している。メルセデス・ベンツは、4気筒エンジン同等の低燃費性能を持ち、8気筒エンジンに匹敵する出力をもつ次世代6気筒エンジンとしている。

メルセデス・ベンツS450価格

・S 450 11,470,000円
・S 450 エクスクルーシブ 13,630,000円
・S 450 ロング 14,730,000円